ショートショートはいかがですか? -2ページ目

熱帯魚

傷ひとつない綺麗なガラスの水槽に、ゴミ屑ひとつない澄んだ水の


中を、熱帯魚が気持ち良さそうに泳いでいる。




底には真っ白にきらめく大小様々な砂利が敷かれ、わずかな水の


流れが青々とした水草を揺らす。




エアーポンプから噴き出された泡が体をくすぐり、ヒーターは常に快適


な温度に調節してくれる。




天井からはスポットライトが当てられ、より美しく、そして華やかに


演出する。












「うわ~、きれいだねぇ~」







妹が水槽に顔を押し付け、熱帯魚を見つめながら言う。





そして手に持っていた袋から一握りの餌を取り出し、水槽の中に放り


投げた。









「いいよねぇ、熱帯魚は」



餌に群がる熱帯魚を見つめながら姉が言う。








「なんで?」



妹は後ろを振り返って姉を見た。









「だって毎日働かないで、好きなだけ食べれて好きなだけ泳いで


いられるじゃない」










「そっか」



妹はまた水槽に顔を押し付ける。


































「お嬢様。お食事の準備ができました」




それはそれは大きな家の中、広~い部屋の一室で、大金持ちの娘達に


向かって執事がそう伝えた。

険しい山

男なら、常に上を目指さなければならない。





例え目の前に、どんなに高い壁があろうとも。





例え目の前に、どんなに高い山があろうとも。





例えそれが、どんなに険しい山であっても。













誰よりも高く・・・。



















そして早く・・・。
























































その山は、その国で最も高い山であった。

5人の勇敢な若者はそれぞれ熱い思いを胸に秘めていた。









































誰よりも早く、あの高い山を制してやる。






























5人は我が先にと競い合い、それぞれ別々のルートで頂上を目指した。

その山が険しすぎて、一度登ったら降りて来れなくなると知っていて

も、男達には関係がなかった。

彼らは後ろを振り返らない。





































見るのは前だけだった。





















































1人目の男は5合目で高山病に罹った。



















2人目の男は6合目で転び、足の骨を折った。




















3人目の男は7合目で熱射病に罹った。




















4人目の男は8号目で脱水症状に陥った。








































そして・・・











































































5人目の男は9合目で寒さに凍えてしまった。







































結局誰も頂上に登ることはできなかった。


















誰もその山を制することはできなかった。



































しかし、5人の心にはある熱い思いが残っていた。






























































「次の男が頂上に登れればいい・・・」



5人はここにきて成長を見せた。





















しかし、もう降りることもできなかった。



この山で生き延びなければならない。


























































































こうして、日本一の山、「富士山」に山小屋という商売ができた。



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フロンティアスピリット

ここに1人の野心家がいる。

彼の名前はA。18歳。

この世の中に一発かましてやろうと思っていた。








Aは高校の友人達にこう言い放った。

































「お前達は一生をこんな狭い村で過ごしていいのか?

世の中にはもっと面白いものや楽しいことが山ほどあるんだぜ。

一生に一度の人生なんだぞ。せっかく生まれたんだからもっと

広い世界を見ようぜ!


























俺達の手で未来を切り開こうぜ!






Aは高校を卒業して、都会の大学への入学が決まっていた。




しかし、故郷に残った彼の友人達は皆聞く耳を持たなかった。













































4年の月日が経った。


















Aも22歳になった。














就職活動を終え、いよいよAも社会に出ることになった。


















Aの大学の友人BがAにこう言い放った。











































「お前は一生をこんな狭い国で過ごしていいのか?

世の中にはもっと面白いことや楽しいことが山ほどあるんだぞ。

一生に一度の人生なんだからもっと広い世界を見ればいいじゃないか。




































世界に挑戦しようぜ!








Bは外資系の企業への就職が決まっていた。






しかし、Aは聞く耳を持たなかった。













































それから25年の月日が経った。










Bには18歳になる息子がいた。



















息子がBにこう言い放った。
















































「お父さんは一生をこんな狭い星で過ごしていいの?

世の中にはもっと面白いことや楽しいことが山ほどあるんだよ。

一生に一度の人生なんだからもっと広い世界を見ようよ。


































































宇宙に行かせてよ!



息子は隣の星への留学が決まっていた。




しかし、Bは聞く耳を持たなかった。






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Life.navi

こっち で新しい作品を書こうかと思ってます。


気負わずにゆるゆると書く予定なのであまり期待しないでください。笑




レインマン

俺ほどの男はいないだろう。











遠足、運動会、入学式、卒業式、成人式、結婚式、旅行。

行事と名のつくものがある時はいつも





















いくら黙っていてもやがてまわりは気付きはじめる。

俺はいつも1人ぼっちだった。

ずっといじめられっこだった。
























でもそんな俺を、母は決して見放さなかった。




























母がいつも俺に聞かせてくれた歌がある。

鼻のトナカイ』という歌だ。

俺はこの歌を聞くと、いつも母のことを思い出す。

俺はこの歌が大好きだった。

そして何よりも、

俺はそんな母が大好きだった。
























母が亡くなったのは俺が22の時。












俺が通っていた大学の卒業旅行で海外へ行ったときのことだった。

行き先はもちろんエジプト

俺の存在が唯一肯定されるところだった。













俺がエジプトへ向かって1週間が過ぎたころ。

俺宛に手紙が届いた。

母の死を知らせる手紙だった。










































母の死因は焼けどだった。

俺の家は放火魔によってがつけられたのだ。





















俺は放火魔を許せなかった。













この世の中から火事というものをなくしてやりたくなった。












































































そして俺は天職を見つけた。










































俺はファイヤーマンになった。


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