ウイルスの猛威 | ショートショートはいかがですか?

ウイルスの猛威

「総理。今、本国では大変な事態が起こっております」

秘書が慌てて部屋に入ってきた。



ここは超一流のホテルの一室。

丁度その国の総理大臣は海外を訪問している期間中であった。














20XX年。

小さな島国をウイルスが襲った。



その島国は面積は小さいものの、他の経済大国と肩を並べるほど発展

しており、また、戦争のない平和な国であった。



医療技術は発展する一方で、女性の社会進出による晩婚化と失業率の

上昇により少子高齢化が進み、GDPの低下と税金対策が大きな問題

となっていた。






















そのウイルスの被害が納まるまで3ヶ月がかかった。



何とかウイルスの拡大は防ぐことができ、被害はその小さな島国だけ

で納まった。
















「総理。ようやく国に帰れますね」

飛行機の中で秘書が首相に囁いた。



「ああ。ところで被害の方はいったいどのくらいだ」

首相がそう聞くと、秘書は深刻な顔になった。



「今回の被害は予想を大きく上回るものとなりました。

今回のウイルスによって全国民の4割が死亡しました」



首相はため息を付いた。




「そうか・・・。それで、その内訳は?」



「はい。死亡した国民の9割が抵抗力の弱い老人と子供です。

今回のウイルスにより、65歳以上の老人と3歳以下の子供のほとんど

が死亡したと思われます」



「残念だ。何の罪もない人達を・・・」

その言葉を聞いて、秘書の頬を涙が伝った。










首相はそっと窓の外を見上げた。

そしてこうつぶやいた。










「何度でも立ち上がればいいさ。子供はまた産めばいい。

これから我が国は再出発だ」

そう言った首相の口元は微笑んでいた。
























ウイルスの猛威によって老人の割合が激減したその島国は、発展の
一途を辿った。





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